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判例に学ぶ労使トラブルの処方箋/岡正俊

カスハラにあった従業員から安全配慮義務違反で訴えられたら〜M事件(東京地裁H30.11.2判決)〜

近年、労働関係の訴訟は社会的関心が高まり、企業にとって労使トラブル予防の重要性は増しています。判例をもとに、裁判の争点やトラブル予防のポイントなどを解説します。(2024年4月23日)

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【事案の概要】
 本件の被告会社Aは、東京23区等でスーパーマーケットを運営する株式会社です。原告BはA社の従業員として、店舗でレジ打ちや接客業務等に従事していました。
 原告Bは買い物客Cから暴言等を受けたにもかかわらず、A社が原告の安全に配慮せず、損害を被ったと主張し、A社等に対して不法行為に基づき損害賠償を求めました。なお、BはCにも損害賠償を請求しました。結論としては、A社及びCに対する損害賠償請求は棄却されました。





【裁判所の判断】

(1)原告Bと被告Cとのトラブル
 原告Bは来店した買い物客Cとの間でポイント付与のことでトラブルになりました。Cは「ポイントを付けられないって何ですか?」「ってか何でそんな言い方されなきゃいけないんですか?」「上から目線でものを言うのか!」などと述べて騒ぎ、店舗マネージャーが対応しました。CはBに謝罪を要求しましたが、店舗マネージャーが応じなかったところ、「Bを辞めさせた方がよい」などと言い残して立ち去りました。

 その後も、来店したCは責任者を呼ぶよう求めたり、レジカウンターを叩いたり、蹴ったり、身を乗り出したりすることがあり、Bが通報ボタンを押して警察が来ることもありました。A社は警察に相談に行ったり、Bを暫定的に他店舗に異動させたり、Cに対してBの対応には問題がないことや売場で大声を出す行為が続く場合は入店を断ることを伝えました。

 一方でA社は、聴取調査などからBのレジ対応には問題がなかった旨を判断したものの、グループの「お客様第一」の理念を伝え、客とのトラブルを避けるように指導などを行いました。Bはこれに疑問を示し、「自分は間違っていない」と述べたり、「Cとぶつかったほうがやりやすい」などと言い、元の店舗に戻りました。


(2)原告の安全配慮義務に関する主張
 原告BはA社に以下のような「安全配慮義務があった」と主張しました。

ア)POSシステムを含めたグループの基本理念を最もよく理解し、お客様に丁寧に説明することができる正社員の配置

イ)深夜の時間帯にアルバイト2名のみで勤務させるのではなく、店舗マネージャーの勤務又は他の正社員数名が直ちに店舗に急行する体制の整備

ウ)被告Cに早期の入店拒否措置と対応義務


(3)原告の主張についての裁判所の判断

ア)について
 裁判所は、原告Bと被告CとのトラブルはPOSシステムの問題ではなく、POSシステム等を説明する正社員を「敢えて配置する必要はない」としました。また、客への説明スキル向上についても、A社は入社テキストを配布して初期対応を指導しており、店舗マネージャー不在時には「サポートデスク」等に連絡をすることができる態勢にあり、「接客トラブルが発生した場合の相談体制が整えられていた」とし、ア)が「必要であるとは認められない」としました。

イ)について
 裁判所は、A社の店舗には、店舗マネージャー等の緊急連絡先が掲示されており、トラブルに対して正社員に相談し、指導を受けたり、対応を求めたりする「体制が整えられていた」としました。また、各店舗のレジカウンターには非常事態に備えて通報用の緊急ボタンが設置され、その存在が従業員に周知されていたこと、深夜の従業員を必ず2名以上の体制としていたこと等から、イ)の義務があったとは「認められない」としました。
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●文/岡正俊(おか まさとし)
弁護士、杜若経営法律事務所代表。1999年司法試験合格、2001年弁護士登録(第一東京弁護士会)。専門は企業法務で、使用者側の労働事件を数多く取り扱っている。使用者側の労働事件を扱う弁護士団体・経営法曹会議会員。
https://www.labor-management.net/
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